生きものも人間も、共に支えあう地球の仲間で、全ての生きものがつながって生きています。井堰川を通して、私たちは「小さな生きもののいのちの輪」を見つけることができました。
私たち人間は、地球に生育し互いにつながりあい、支えあって生きている多様な生きものの一部です。バランスを保ちながら成り立っている生態系が崩れ始め、かつてないスピードで生物多様性が失われていく中で、未来の世代の子どもたちに地球の多様ないのちの豊かさを残していくには、我々はなにができるでしょうか。
川という身近な自然の中で生き物を、五感を使って見て、触れて、感じることができたのは、子どもたちにとって、豊かな感受性を育む貴重な体験でした。
はじめて出会った未知なものに触れた時の感動。小さな魚がバケツの中で死んでしまった時みせた思いやり、憐れみ。「オタマジャクシを育ててカエルになったら、また、川に戻してやるよ」とうれしそうに持ち帰った子ども。トノサマがエルを捕まえて、「数がどんどん減っているんだって、よく生きていたね」とカエルの背中を撫でたこども。やさしさや愛情など様々な感情が呼び覚まされていくのをみて、大人も感動しました。
子どもたちが出会った事実のひとつひとつはかけがいのないものです。しかし、川を高いコンクリートの護岸にして子どもたちを遠ざけ、子どもたちからこんな楽しい遊びの場を奪い、小さないのちの輝きを知ることもなく、育っていく子どもたちが可哀そうです。生物多様性の大切さを訴えるだけではなく、感性豊かな子どもたちが、自然の中で、生きものとたくさん触れ合う環境作りが重要だと思いました。
井堰川の生きもののつながり
井堰川には、ヨシがたくさん生えています。ヨシはリンや窒素を吸い上げて、水質浄化にも役立っています。また、腐って堆肥化したものは、菌類やバクテリアによって分解され、それを養分にして植物プランクトンが大量に発生します。それをエサにミジンコなどの動物性プランクトンも大発生します。魚やオタマジャクシやヤゴなどはその動物性プランクトンを食べながら大きくなります。そこへ魚をエサにしているサギ類がやってきます。稚魚を食べるライギョやトノサマガエル、そのヤゴもいます。カエルをエサにするヘビもいました。ヘビをエサにするトビやカラスもいます。このように「食べたり、食べられたりする関係」の中で、たくさんの生きものたちが、さまざまにつながりあって生きています。どれも大事な生きものなのです。「いのち」が「いのち」を支えている現場を観ました。井堰川はそういう意味で、豊かな川で、人間の感性も豊かにしてくれる自然です。井堰川探検は、身近な生物多様性を実感した貴重な体験になりました。これを機にもっと、たくさんの生きもののつながりを考えてみたいと思います。
機関紙掲載記事より
昨年は新型コロナ感染防止のため中止になった井堰川探検。今年は学校側の希望もあり、マスク着用で実施しました。曇りがちながら少し日差しもある穏やかな天候に恵まれ、あいさつの後、9時頃に学校を出発。手にはタモや捕った生きものを入れるバケツなどを持って、川に降りることができる水路の所までみんなで歩きました。
現地に着くとさっそく川の中へ、と思ったら手前の水路でさっそく最初の生きものを発見してまず大騒ぎ。体長30〜40cm、太さ5mmぐらいのシマヘビです。それから川の中へ入りましたが、入った所は川底を掃除したばかりで、砂も水草もなく水もきれい。じっと目をこらすと小魚が泳いでいるのは見えますが、せっかくの探検ですからもっといろいろな生きものが隠れていそうな砂がたまり、草がいっぱい生えている川下へところどころ足を取られ、ひざ上まで水につかりながら進みました。
それから後は少人数のグループに別れ、生きものを探し、タモで捕まえます。ミズスマシから始まりヤゴ、モツゴやスジエビ、モクズガニ、オタマジャクシにカエルもいました。日本じゅうで困っているアカミミガメも数匹捕まえましたが、カメはいつの時代も子どもの人気者で、「カメだ!カメだ!」と大騒ぎ。一番の大物はスタッフがタモですくい上げた体長およそ40cmのナマズでした。
中には腰までずぶ濡れになりながら生きもの探しに夢中の子どもたちと、引率の先生も(やっぱり男の子ですから)少し子どもにかえって探検隊の列はずいぶんと長くなってしまいましたが、川沿いの道からはボランティアの保護者の方々にも見守られ、終わる少し前に外出から戻られた校長先生にも声をかけていただき、およそ1時間、子どもたちは外からではわからない、びっくりするほど豊かな川の探検をにぎやかに生き生きと楽しんでくれたと思います。最後は、3年生に頼まれたというヤゴを残して、捕まえたすべての生きものを川に帰して、再び歩いて学校へ戻りました。 (浜島)
2019年6月6日(水) 4年生2クラス69名、教師3名、保護者15名、スタッフ6名 |
井堰川は、勅使池を水源とし田畑に水を送る農業用水路として建設され、農作物の生産に重要な用水路でしたが、その後地域開発が進み防災対策の絡みもありコンクリートブロックの護岸に囲まれた水路になっています。
それでも市内では自然が残っている数少ない川であり、生物にとって生息しやすい環境となっています。しかし、河川管理・整備の悪化や、外来生物の移入による生体系への影響等によってきれいな河川とは言い難く、もう少し水辺環境整備をしなければとの声も聞かれます。
現地に到着し川に入るや否や膝まで水に浸かり「サカナをつかまえるぞ」と、たも網で河岸の水際を探り始めました。上流と下流で歓声が響き、いつも静かな川は大賑わいでした。採取した生き物の種類は例年と変わらない状況でしたが、生態系に悪影響を及ぼすと懸念されるブルーキルやブラックバスはいませんでした。
外来種の大きなミシシッピアカミミガメはいました。捕まえて興奮気味の男の子や30㎝以上もあるシマヘビに触ってみる女の子もいました。たくさんの生きものに触れ観察することができました。探検で生きものに実際に触れ、川の中には多様な生き物が命を育んでいることを知り、好奇心や感受性を育む貴重な体験になったことと思います。
今回参加された保護者から「素晴らしい貴重な体験と自然環境を学ぶ機会を与えて頂いた関係者に感謝したい」、また、「もう少しきれいな川で探検させてあげるように私たちも努力しなければね」という感想を聞きました。(熊谷)
井堰川で見つけた生きもの
コイ、カマツカ、ナマズ、モツゴ、ヌマエビ、アメリカザリガニ、シオカラトンボのヤゴ、モクズガニ、ハグロトンボのヤゴ、タイワンシジミ、マシジミ、ヌマガエル、トノサマガエル、アマガエル、カダヤシ、マルタニシ、ミシシッピアカミミガメ、シマヘビなど
2018年6月13日(水) 4年生2クラス64名、教師4名、保護者7名、スタッフ7名 |
学習内容と注意事項を受けたあと井堰川へ移動、川に到着すると準備を整え川の中へ。膝まで水に浸かり水遊び気分、これも好奇心や感受性を育む貴重な体験でもあります。先ず「生きもの探してみよう」とタモ網で川岸・水際を探り水生生物の採集活動が始まると、すぐに上流・下流で「見つけた」「捕れた」との声が飛び交っていました。捕獲した生きものは例年と変わらない状況でしたが、今回初めてブラックバスの稚魚が数匹見つかりました。この状態は今後井堰川で「ブラックバス」が大繁殖し、生態系に影響を及ぼすのではと懸念されます。それに加えて気になったのが、空き缶やビニール袋などのごみが多かったことです。スタッフが拾っていると児童の何人かが一緒に拾ってくれました。ごみは川の水質悪化を招き、生きものも影響を受けます。今回参加した児童は、井堰川探検を最初のベースに目や耳、皮膚感覚など五感を通して自然と接して行くなかで、様々な物事に対する認識を深めていけるのではないかと思います。
井堰川で見つけた生きもの
コイ、カマツカ、モツゴ、ブラックバス、ドンコ、ドンコ、タイリクバラタナゴ、ウキゴリ、スジエビ、ヌマエビ、タニシ、カワトンボのヤゴ、アメリカザリガニ、ヤゴ、アメンボ、ミシシッピアカミミガメ、タニシ、ヌマガエル、タイワンシジミ、モクズガニ、オタマジャクシ、ナマズ、ハグロトンボ、アオスジアゲハ、モンシロチョウなど
2017年6月13日 4年生2クラス77名、教師4名、スタッフ7名 |
私たちは2010年より、沓掛小学校4年生と一緒に井堰川で継続して生きもの調査をしています。かつて井堰川は、勅使池を水源とした農業用水路でした。自然の水路は、愛知用水の導入、洪水対策などでコンクリート護岸に変わり、魅力のない排水路と化し、自浄作用も失いかけました。川は、人の暮らしの影響を大きく受けながら変化してきました。川の探検でうれしい発見がありました。川は、汚れた水、要らない水を流すだけではなく、多様な生きものが命を育んでいたこと。そして、子どもたちが生きものに触れ、好奇心や豊かな感受性を育む貴重な体験の場になったことなどです。
私たち大人は子どもたちから川を遠ざけ、こんなに楽しい遊びの場や生きものの小さな命の輝きを知ることのできない環境にしてしまいました。「もっと、きれいな川でサカナをとりたい」と言った子どもの声が胸に刺さりました。もっと、魅力あるきれいな川にできないでしょうか。私たちにできることはなんでしょうか?大きな宿題です。(中村)
井堰川で見つけた生きもの
コイ、カマツカ、ナマズ、モツゴ、テナガエビ、スジエビ、ヌマエビ、アメリカザリガニ、ヤゴ、川トンボのヤゴ、マシジミ、タイワンシジミ、ヤマトシジミ、ヌマガエル、カナヘビ、シオカラトンボなど
2016年6月7日(水) 2クラス67名、教師3名 保護者10名 スタッフ6名 |
梅雨に入り天候を心配していたが、幸い薄曇りで「井堰川の探検」を予定通り行う事が出来た。市役所に頼んで例年通り、川の中のアシ等を刈取ってもらった。合わせて今年は、重機でナラシ作業を行ったため、通常歩けるところがぬかるみ状態になってしまった。子どもたちが川に入るのを嫌がりはしないかと心配したが、案ずることはなくみんな泥に足を取られながら、元気よく所定の場所へ移動し、生き物調査に取り掛かった。子どもたちは生き生きとした表情で泥にまみれたり、水浸しになりながら色々な生き物を獲っていた。珍しいところでは、川トンボの幼虫、ナマズの稚魚、中々獲る事が出来ない60㎝くらいの大きなコイやシマヘビ、カナヘビがいたが、常連のミシシッピアカミミガメはいなかった。近年、生き物に触れる川遊びなどができる場所と機会がない中で、子どもたちにとって貴重な自然体験が出来たと思う。(岩名)
見つけた生きもの
コイ、ギンブナ、ゲンゴロウブナ、ナマズ、モツゴ、タモロコ、ヌカエビ、コテラヒメヌマエビ、ヌマガエル、ニホンカワトンボのヤゴ、モクズガニ、シマヘビ、カナヘビ
川の中にはたくさんの生物がすんでいます。川の中にすむ生物の種類 は、水の中に溶けている酸素の量(溶存酸素)と深い関係にあります。
川の水に溶けている酸素の量は、水温と水の汚れの程度によって変わり、水温が低いほどたくさんの酸素が溶け、水温が高くなれば溶ける量は小 さくなります。また、酸素は水中の植物によっても作られますが、汚れている川では水中に溶けている酸素が細菌等によってたくさん使われることから、酸素の量が少なくなってしまいます。
酸素の量が少なくなるときれいな水にすむ生物はすめなくなり、汚れたところの生物が多く見られるようになります。このように水の中に 溶けている酸素の量とそこにすむ生物の関係から、その地点にすむ生物
を調べることにより、水質など川の環境の状態が分かります。このよう に川の環境の状態を私たちに教えてくれる生物を『指標生物』といいます。 水のきれいさの程度をきれいな水(水質階級Ⅰ)、少しきたない水(水質 階級Ⅱ)、きたない水(水質階級Ⅲ)、大変きたない水(水質階級Ⅳ)の4階
級に分け、それぞれの水質階級にすんでいる指標生物(30種類)を表1 に示しました。これらの指標生物は、水の汚れに敏感なものの中から、目で見ることができる大きさで、日本全国に広く分布している生物を取り上げています。
◆生態系ってなに?
地球上の植物や動物、微生物などすべての生きものは、土や水、大気という環境の中で生きています。生きものとそれらを取り巻く環境がお互いに関わりあいながら、ひとつのまとまった仕組みと働き(システム)を形づくっています。これを生態系(自然生態系)といいます。
人間も生態系の一部ですが、人間は道具を使い、科学技術を発達させた結果、他の動物とは比較にならない大きな力を持つようなり、生態系を脅かして来ました。人の暮らしは便利で快適なものになりましたが、その結果、地球温暖化をもたらし、大気や水や土壌を汚染し、森林や緑地を減少させ、多くの野生の植物や動物の減少や絶滅を招いて来ました。人間は、衣食住のすべてを地球上の動物や植物、そして鉱物に依存して生きています。ですから、地球上の動物や植物が絶滅の危機に瀕すれば、そして鉱物資源が枯渇すれば、人間そのものの生存さえ危うくなります。
◆井堰川の生態系
豊明市内では、「二村山」や「一之御前の森」などの雑木林や「勅使池」「三崎池」などのため池、川、公園などいろいろな場所で、さまざまな異なる生態系が形づくられています。
私たちは、沓掛小学校の4年生と一緒に探検している井堰川で、「川の生態系」について考えてみました。
井堰川はコンクリートブロック護岸でまっすぐな川に改修され、川底も水の流れも単調でした。そこに棲む生き物の環境が非常に貧しかったといえます。ですが長い時間を掛けて、川の中で自然に土が溜まり、川幅を狭めたり、広げたり、流れの速い所、遅い所ができました。遅い所には土砂が堆積してヨシが生え、水際は生き物の棲みやすい今のような形になりました。川の中のヨシはリンやチッソを吸い上げて、水をきれいにしてくれます。腐った根や魚のフンなどは、菌類やバクテリアによって分解され、それを栄養にして植物プランクトンが大量に発生します。それをエサにミジンコなどの動物プランクトンが大量に発生します。小魚・カニ・貝・オタマジャクシなどは、動物プランクトンを食べながら大きくなります。それをライギョ、ナマズなどの魚やヌートリアなど小動物、アオサギ、コサギなど鳥が食べます。このように「食べる・食べられる」の関係の中で、たくさんの生きものが様々につながりあっています。これを「食物連鎖」といい、生きものは自然生態系のバランスを保ちながら複雑に絡み合い、助合いながら生きています。
◆生態系ピラミッド
食物連鎖の構造にはいくつかの層があります。生態系において、生産者を出発点とする食物連鎖の各段階 (生産者・消費者など)を栄養段階といい、栄養段階が上がるにつれて、個体数・生物の量・生産量は一般的に減少します。栄養段階順に積み重ねると、ピラミッドの形になるので、これを「生態系ピラミッド」と呼んでいます。
生態系内の物質は、様々な形で循環しています。
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ナマズ |
モクズガニ |
タイリクバラタナゴ カマツカ |
シマヘビ |
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カワトンボ ヤゴ |
トノサマガエル |
ブルーギル |
ミシシッピアカミミガメ |
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